人生やめたい

自己満足用

9/21 友人への執着

それでもいつか報われるときがきたらわたしは、

 

丁度夏休みの中頃、8月に入ってまもなくのことだっただろうか、友人のうちの1人に避けられているような感じがした。

もともと私が共に行動していたのは3人でそのうちの1人──仮にKとする──は部活は違うが三年間同じクラス、もう1人──こちらはTと呼ぼう──は部活が同じで二年間同じクラスという珍しくもなんともないグループである。

三年生ということもあり、私たちには普段の授業の他に受験に向けて朝補習や業後補習、土曜補習、夏補習などがある。

夏休みまでは誰かが遅刻や欠席をしない限り3人で仲良く並んで補習を受けていた。多分。

夏休みに入ってからの補習は私の電車の時間上登校時間がギリギリになってしまうため、2人は先に会場へと向かっていた。私はギリギリで合流するつもりだったのだ。

しかし、私が来た時点で彼女らの隣は埋まっていたので、私は同じ電車に乗っていた隣のクラスの部活友達──MとPとおく──と一緒に座ることにした。

この状況は夏休み中毎日と言っていいほど続いた。これがいけなかったのだろうか。

補習は2クラス合同で行われ、会場もほとんど変わらなかったため、席を立つ必要はなかった。流石に昼は教室で食べるため、席を立ったが荷物は置きっぱなしで昼食後もほとんどの人が席を移動することはない。

そう、つまりKとTと並んで補習を受けたことは両手で数えるぐらいしかないのだ。MとPも去年同じクラスでKとTとも面識があったため、前後で受け会話を交わすことなどはあったが、所詮、前後である。隣には負けるのだ。

ここら辺から私は異変を感じ始めた。KとTが揃って出席していないことが度々あったのだ。

その日や時間帯はまちまちだったが、そのような日は決まってSNS──某青い鳥である──にある喫茶店の画像が載った。2人は補習をサボって喫茶店に行っていたのだ。私を除いて。

1度だけ「喫茶店に行くから補習サボる」と言ってきたことがあったが、特に私を誘うようなことはしなかった。行きたいとは言えなかった。

この時点で何か腑に落ちない感じはしていた。

それでもまだ良かったのだ。SNSで繋がっていたし、昼食は一緒に食べ、お盆にはお泊まりもした。Kとは水族館へ行ったし、Tとは都会の方へ買い物に行った。楽しかった。

だから多少の違和感を気のせいだと思っていた。

8月下旬、九月にある学校祭の準備が始まった。

私のクラスは明治時代をモチーフに謎解きゲームをやることになった。土曜の18時にやっている某アニメが好きだった私はなんとかして謎解き班に入りたかった。しかし、Tは明治時代の建築物や文化が好きで大道具班に入りたかった。Kはなんでもいいと言った。

結果から言うと、私は謎解き班になり、TとKは大道具班になった。この時に私が大道具班に入っていれば、今こんなことにはなっていなかったのかもしれない。

謎を作るのは楽しかったが、班は楽しくなかった。どうして私は忘れていたのだろう。話せる人がいなかったのだ。人見知りな上1年の頃から同じ人としか関わってこなかったせいでグループが違う人と話すことが苦手だった。謎解き班はクラスの中心人物で構成されていた。KやTの他にもクラスに友達はいたが、全員大道具班に行ってしまっていた。私の班には友達がいなかった。

一方でTたちのいる大道具班は楽しそうだった。私が普通に話せる人たちで構成されていた。羨ましかった。完全に私の自業自得であるのに。

謎を作る作業は夏休みの文化祭準備期間の間に終わった。それからは大道具班を手伝うことになった。私は何をトチ狂ったか、Tたちではなくある友人2人を手伝っていた。理由なんてない。強いていえばその2人が教室で作業していたからだろう。KとTは廊下で作業していた。

この頃から私はあまりSNSに浮上しなくなった。そろそろ勉強に力をいれなければいけないと思ったのと、気分が乗らなかったからだ。この時点で3人とも去年より浮上率が下がっていた。いや、正確に言えば浮上はしていたが投稿はしていなかった。その中で1番投稿率が高かったのはK、2番目がT、3番目が私だった。

ある日Tが「更新されてないTLを見続けるのがしんどいからログアウトする」と言った。Tが浮上しなくなった。Kの浮上率も下がった。

私には3人の身内アカウント以外にもあるソシャゲのアカウントがある。そのソシャゲは3人ともハマりやっていたが、そのアカウントは教えていなかった。しかし、ひょんなことからKのソシャゲ垢を見つけ、そのまま私の垢も見つかった。見つかったものはしょうがないのでKと繋がった。この出来事が夏休みの終わり頃である。

9月、新学期が始まった。明らかな異変を感じた。

Tが私に話しかけなくなった。席が遠いのもあるが、TはKにばかり話かけた。昼食の時も私たちは私が文化祭作業で手伝った2人をいれて5人グループで食べていたが、Tは私以外の3人にしか話しかけなかった。これは思い込みかもしれないが、Tは私から1番遠いところに座っているような気もした。それを意識した時から私も必要最低限以外Tに話しかけなかった。Kは何も変わらなかった。

土日に模試があった。私とTはまだ部活をやっていたのでTに日曜日の部活に出るか、と聞いた。Tは出る、と答えた。その夜TからLINEが来た。

「日曜日部活行くって言ったけどKとラーメン食べに行ってカラオケ行く約束したから行けない」

部活に出れないのは良い。問題はその後だ。私はそんな話1ミリも知らなかった。どうして? どうして誘ってくれなかったの、と多少の憤りを感じた。しかし、そんなことは聞けないため「次行く時は私も誘ってね」と送った。案の定、「(私の名前)も行く?」と送られてきた。私はイライラした。もし、最初から「カラオケ行くんだけど来ない?」と送られてきていたら私は喜んで行っただろう。しかし、実際はどうだ。私が次の機会を仄めかした皮肉を込めた言葉を送らなければ誘いは来なかった。

正直ショックだった。ついにTに嫌われたのだ、と思った。Tが私に話しかけないのも、私を誘わないのも、いつも一緒に帰っていたのに1人でさっさと帰ってしまうようになったのも全部全部私のことを嫌いになったからだったのだ。我儘な私に愛想を尽かしたのだ。耐えられなかった。私は誘いを断った。カラオケの日、KがSNSにあげていたTとのカラオケの様子はとても楽しそうだった。笑っていた。最近私はTに面と向かって笑顔を向けられたことがあっただろうか! 悲しくなった。2年の頃はお互いに1番遊んでいる友達だ、と言っていたのにTは私に愛想を尽かしてしまった。文化祭は1週間後に迫っていた。

文化祭は3人で回るつもりだった。しかし、私はTと一緒にいることが怖かった。Tは私を避けていた。私はきっと文化祭はTとK、2人で回るのだと思った。そのつもりがなくても、一緒に回ったらTに迷惑だと思った。だから私は申し訳ないながらも準備を手伝った2人に一緒に回ってもいいか聞き、了承の返事を得た。私は逃げた。

書き忘れていたが、文化祭当日はクラスの出し物の役割がある。5人でご飯を食べているときTはKを出口係に誘った。出口係は2人しか出来なかった。私は他の2人と中にいる使用人をやることになった。やはりTは私を誘わなかった。使用人など他に3人でやれる係もあったのにTは2人の係を選び、Kを誘った。つまりそういうことだった。当日の役割の中で午前当番と午後当番は分かれることになっていた。特に午前にするか午後にするか話し合うことはなかった。この時点でTは一緒に回るつもりがなかったのだろうか。

文化祭を3日後に控えた土曜の夜。

私はこの文化祭での文化部発表で部活を引退するため、後輩に向けて感謝のミサンガを作っていた。不器用なので1本作るのに2時間ぐらいかかっていたため、確実に徹夜しないと間に合わなかった。1人だと寝てしまうと思ったため、同じくやることがあったKとLINE通話をすることにした。

23時頃から通話し始め3時になった頃、私はKからTが私を避けている原因を聞き出そうと思い、Tの話題を出した。そこでKは言った。

「Tは拗ねてるだけだよ」

は? と思った。信じられなかった。しかし、Kの話を聞いていると可能性として考えられることだった。真実は今でも分からないが、KはTからいろいろ話を聞いているだろうと思い、私は拗ねてるという可能性もあるな、と思い始めていた。Kに文化祭では他の子と回る予定だ、ということを伝えるとめちゃくちゃ怒られた。更に溝が深くなる、やら修復不可になる、やらいろいろ言われ、説得され、結局私はKとTと回ることになった。元々回る予定だった2人には申し訳ないという旨を伝えた。約束を破ることになってしまったが、私は少しだけ晴れやかだった。

当日、3人で回った。怖かったが私は以前のようにTに話しかけた。無視されなかった。会話をした。楽しかった。一緒に帰った。これで元通りだと思った。

次の日には体育祭があった。前日が雨だったため予定より1時間遅れて開催された。ここでも3人で行動することが出来た。Tと話せたしなんならTから話しかけてくれた。夜にはラーメンにも行った。私の今までの思いは杞憂だった、と思った。たくさん笑った。

次の日からは普通に学校だった。今までと何も変わらなかった。Tは私に話しかけなかった。だから私からTに話しかけた。Tは答えてくれた。それでも、昼食はKにしか話しかけなかった。帰りのSTが終わったとき、Tは帰りの準備をしていなかった。まだ少し期待していた私はTに「帰らないのか」と聞いた。「帰るよ」と返ってきた。そして私は「Kについて行かないの」と聞いた。ついて行くだろうと思っていた。その日、Kが書類のコピーを取って担任に渡さないといけないからコンビニまで行かなければいけなかった。Kについてきて、と言われ私はついて行くことにしたのだった。Tに「〇〇は行くの」と聞かれた。「行くよ」と答えた。するとTはこう言ったのだ! 「じゃあいいや」と。コピーをとって学校に戻ってきたとき30分以上経っていたにも関わらずTはまだ学校にいた。靴があったのだ。「帰る」と言っていたのに帰ってなかった。嘘をつかれたと思った。Tは私と帰りたくなかったらしい。

元通り、ではなかったのだ。夏休みまではよくあっていたのに今では目も合わない。Tがこっちを見ない。やはり、Tは私を避けているように思えた。そしてその夜。私は、SNSでTらしき人のソシャゲ垢を見つけた。その垢は私が夏休みに見つけたKの垢と繋がっていた。遡ってみるとその垢は夏休み頃から存在していた。私は、存在すらも知らなかった。Kは知っていて繋がっていた。Kにあの垢はTなのか、と聞いた。Tだった。Tは私の垢も知っているらしかった。私だけが知らなかった。TはSNSをやめていなかった。

それから私はTを非公開リストにいれた。フォローすることは怖くて出来なかった。Tは私の垢の存在を知っているのにフォローしてこなかったからだ。きっとTは私と繋がりたくないのだと思った。だから非公開リストにいれた。その数日後、Tのその垢は鍵垢になった。偶然かもしれない。しかし、あまりにもタイミングが良すぎた。私はKにTの垢を知っていることを伝えていた。リストにいれていることも伝えていた。もし、KがそれをTに伝え、見られたくなかったTが鍵にしたとしたら? 偶然かもしれなくても私はTに拒絶されたと思った。そしてまた話しかけることをやめた。

土曜日。その日は模試だった。相変わらずTとは会話をしなかった。Kも他の子もTと話していたから居場所がなくて、教科と教科の間に隣のクラスへ行った。虚しかった。家に帰るときに雨が降っていた。台風が近づいてきていた。その日はほとんどKとも会話を交わすことがなかった。家に帰ったら誰もいなかった。日中のことを思い出したら涙が出た。もう本格的にだめだと思って涙が止まらなかった。

日曜日もTは1人でさっさと帰ってしまった。靴はなかった。私はKとご飯を食べ、方向が逆なため、1人で帰った。

月曜日、祝日。Tのアカウントの鍵が外れた。内容を見ると鍵をかけていた間だけ投稿されていなかった。KからTが鍵をかけている間も投していたということを聞いていたため、きっとTは鍵をはずすために投稿を消したのだ。思い込みかもしれないが、私に見られても良いように。

火曜日、学校へ行った。この日は丁度席替えで私はKの後ろになった。今までTは毎放課Kに話しかけていたからその流れのまま私にも話しかけてくれるんじゃないかと思った。Tは来なかった。来てもKに話しかけて私には話しかけなかった。虚しくて無理矢理会話に入り込んだ。昼食も相変わらずだった。私は今まで通りTに話しかけた。この日、体育でバレーをやり、その時の班にTがいた。Tと私は一緒にレシーブなどの練習をした。会話をした。笑った。だからいける、と思って毎回話しかけた。

それでもやっぱりTはKばかりだった。スマホを見ていて面白いのがあればKに見せ、私には見せない。Kには話しかけ、私には話しかけない。まるで私は1人でご飯を食べているようだった。

Kが羨ましかった。Tが話しかけるKが羨ましい。

Kと通話した日、Kは「Tって友達への独占欲とか執着が強いよね」と言った。Tには1年の頃から仲が良かったEという友達がおり、毎朝一緒に登校していたが、Eに彼氏ができ、Eが彼氏と登校するようになって怒っていた。Eに彼氏が出来たことも、一緒に登校してくれないことにも怒っていた。TはEが離れていくことに対して怒っていた。TはEに執着していたのだと思う。これをKは示したのだろう。TはEが離れていくことで苦しんでいた。悪くも言っていた。しかし、以前「じゃあもう友達やめれば?」と聞くと「いやそれは……」と答えた。Tが苦しむならEと縁を切ってしまえばいいのにTはEを捨てなかった。Tが苦しんでいたから早く縁を切ってほしかった。Eのことも羨ましかった。妬ましかった。私にも執着してほしい、と思った。

でもよく考えればTは人望がある。私にはKとTしかいなくてもTには私以外にも友達がいるのだ。それこそ私よりもTに合う友達が。私にはTに執着してもらえる要素がない。私が一方的に執着しているだけ。それなのにTに執着してほしい! なんて烏滸がましいにも程がある。叶いっこないのだ。

だったらもう一方通行でいいじゃないか。どうせ進路は分かれるのだ。大学にあがったら自然と離れる。この縁は高校の間だけ。

だから、勝手にそばにいよう。話しかけよう。話しかけてくれなくても大丈夫。笑いかけてくれなくても大丈夫。面と向かって拒絶されるまで近くにいよう。

それぐらいは、ゆるしてね

 

 

今日、私は学校を休んだ。

報われる日はきっと来ないよ